カズのゴールは、しっかりと東北に届いている

日テレの実況アナウンサーは「カズはやっぱりカズでした」と言った。全くその通りだと思う。

いったいどれだけの人がこのカズのゴールに救われただろうか。東北関東大震災に始まり、福島第一原発事故、それによる水質汚染風評被害…。暗いニュースが相次ぐなか、久しぶりの、本当に久しぶりの明るいニュース、幸せな瞬間だった。

岩手のある避難所では、いつもの消灯時間は9時だが、昨日はチャリティーマッチに合わせて消灯時間を試合終了後にまで延長してみんなで観たという。小笠原満男が試合前日にマスコミに対して懇願した「被災地でもテレビを観れるように協力してほしい」という思いは、大船渡高校などで叶ったようだ。おそらく未だ電気が通らず、テレビもなく、このチャリティーマッチを観ることができない人たちも多くいただろう。だが、ほんの少しでも被災地の方々にこのチャリティーマッチが届けることができたということ、被災に対するサッカー界の素早い対応と取り組みは評価されるべきだと思う。

カズは試合後に「みんなの気持ちがひとつになったゴールだと思う。東北の皆さんに届くことを祈っています。きっと、届いたと思います」と言い、試合後のミックスゾーンでの取材では、「カズダンスをやっていいものかどうか迷った部分もあった。でも、みんなに期待されていることだと思ったのでやることにしました」と神妙な面持ちで語った。

被災地の避難所にいた13歳の少年は試合後に「カズダンスが見れてよかった。津波なんかに負けていられないし、頑張っていこうと思った」と笑顔いっぱいに語り、普段サッカーなんて観ないだろうと思われるようなおばさんも「何か元気が出た、こうやってみなさんから応援してもらえているという気持ちは十分に伝わってくる。頑張らなきゃね」と言っていた。

たとえ一瞬であっても、あのカズのゴールで幸せな気持ちになれた人や被災の苦しみを忘れることができた人がいたということが、このチャリティーマッチの最大の意味だと思う。もちろん直接的な支援は必要だ。だが、その一方でこういった心を支援するような形のものも無くてはならないと思うのだ。

カズのゴールは、しっかりと東北に届いている。