鹿島アントラーズ・小笠原満男の行動力

東北関東大震災で被災した岩手県大船渡市。大船渡市出身のサッカー選手といえば、元日本代表で鹿島アントラーズに所属する小笠原満男だろう。彼は震災後、NHKの取材に対して「何かできることはないかと考えている。できることなら今すぐにでも現地に駆けつけたい」と語った。

それからほどなくして、小笠原は自ら車を運転し、本当に現地へと駆けつけて避難所や母校を訪ねて回った。インタビューを見てどうせ口だけなんだろうと思った人たちをあざ笑うように。

避難所では、突然現れたスター選手に少年たちは歓喜し、束の間の笑顔をもたらした。そして被災者たちに「何か不足しているものはありませんか?」と声をかけ、母校では「何をしていいのかわからないけど、とりあえず母校ということでここへ来てみました。何ができるのかを見極めて自分ができることをやりたい」と述べた。愚直で、とても正直な男なんだなと思った。

小笠原は東北出身者のJリーガーを集め、できる限りの物資を届けようと動きだした。

大船渡の避難所をまわり、物資が圧倒的に足りないことを感じた小笠原は、すでに東北サッカー協会を窓口として衣類などの物資供給を開始しているという。

そして小笠原は「グラウンドもスパイクもボールもなくなり、このままではサッカーをやめてしまう子供も出ると思う。個人的にはサッカーで集めたお金をサッカーの復興に使えないかと考えている」と語った。

被災者に向けた口だけの応援エール、募金活動やチャリティーマッチ、被災者を思い浮かべてアイドルが流す涙もいいだろう。そこに心があるかないかは別として、行動しないよりは、何か行動した方がいいに決まっている。だが、小笠原満男という男がここ数日間で私たちに見せてくれた姿は、ほかのどのスポーツ選手や芸能人たちよりも意味があって意義があると思える。小笠原の行動には説得力がある。NHKの最初のインタビューで目を腫らしていたあの姿から見ていれば、小笠原の本気度は誰にでも伝わるだろう。強い思いを胸に、実際にこうした行動を起こしていける人間はそう多くない。